日本のラグビーはリーグワンも架橋に入り、チャンピオンを決める最後の盛り上がりの最中だと思います。アスリート、エリートたちの集団同士の対決、どのチームが王者になるのか、本当に楽しみです。
育成パスウェイとは、競技者やコーチが育っていく道筋といえばわかりやすいでしょうか?
競技を始めてから、その国を代表する最高峰のリーグで戦い、強いては代表選手となるまでのエリート育成だけでなく、そこで活躍するコーチやアナリストなどの育成にもその道筋が、各国の文化的背景も考慮されながら戦略化されている今日のラグビー界の現状。
一方、日本に目をむけて、多くの選手をリーグワンに選手を輩出してきている土台となるべく大学や高校ラグビーの現状をみると、このままで日本のラグビーは大丈夫なの??って心配になります。
リーグワン自体の日本人採用数の減少
有名・強豪校への選手の集中
ラグビー部をもつ高校数の減少
選手数確保のために苦労している下部リーグの大学
子供達がラグビーという競技を選択し、競技を続けるという環境について、多くの課題が存在すると同時に、その子供達を育てる「コーチ」を育成する機会もその影響を受けていると感じています。
コーチが育つには、それまでの経験と別に、
① インプットの機会:新しい知見に触れる機会
② アウトプットの機会:経験や知見を使って実際にコーチングする機会
これらの機会をどのように作り出し、多くのコーチが常に触れられる環境を整えられるかは非常に重要です。
コーチングリソース=インプット
こういう時代なので、何か知りたいときはGoogleで検索して、練習メニューはYoutubeを見れば、簡単に知りたいことを探すことができます。
コーチングのライセンスも日本協会の講習会を受講すれば取得できる環境があります。
多くのセミナーなどもありますが、自分の欲している情報に出会えるかは微妙です。
自分自身の経験から、インプットとして今でも役に立っているのが実践的なリソースでした。その経験からRugby Performance Lab.ではより実践的なプログラムを心がけるようにしています。
経験談① Blues主催のコーチングコース
このコースは3日間のコースで、多くのクラブや地元などから選抜されたコーチの方が参加していました。最初の2日間では、ワールドカップのサモア代表の試合を中心に多くのコンテンツについて講義やグループ討論がありました。その内容は、日本協会で受けたものと似ているものでした。
しかし、最終日に衝撃をうけることがありました。それは、今まで議論の中心だったサモア代表の監督がコースに出席し、実際にどういう考えで試合に向けて準備したのか、実際の試合での見解など、多くの意見を当事者から聞くことができました。
これほど、実践的で、これまでの知見との差を感じることができた時間はありませんでした。
経験談② NZ協会主催カンファレンス
NZにいた頃、NPC、スーパーラグビー、各世代代表、オールブラックスの全チームのスタッフが毎年NZ協会の招待でウェリントンに集まり、カンファレンスが開催されました。
このカンファレンスは、1泊2日で全体でのミーティングだけでなく、専門エリアに分かれた部会も開催され、夜には参加者全員でディナーがあり交友を深める機会となりました。
私もノースハーバー代表スタッフの一員として参加して、アナリストの部会に出席しました。そこでは、主にオールブラックスでの様々な取り組みが紹介されて、多くのインプットの時間になっただけでなく、多くの交流の場にもなりました。
こうした内容がコーチ、S&C、メディカル、チームマネージャーなどに分かれて行われていることに驚愕したのを覚えています。
もちろん、同様にノースハーバー協会などの各協会も地元クラブなどの若いコーチを集めて、ブラッシュアップのための機会を多く作り、多くのコーチの育成を支援していました。
この活動により、有名選手ではなかった多くの人たちがコーチとして成功している姿に感銘を受けたのを覚えています。そして、その姿を目標に選手として経歴のない自分が頑張れた原動力となりました。
これまでお世話になったラグビー界への感謝として、今後の若い人材に対して何か自分でも貢献できることはないかという想いが、Rugby Performance Lab.を立ち上げたきっかけでもあります。
コーチングの場=アウトプット
インプット以上に大切なのが、アウトプットです。ここでの多くの失敗や成功が糧となり成長の機会となるからです。
リーグワンなどのトップチームでは、大学などでのコーチングが評価されて機会を与えられると言うことは残念ながら皆無です。
現実には、現役を引退した選手がコーチとなり、その人たちの周りには外国人も多く、チームの中で多くのインプットの機会を得ながら、アウトプットするチャンスも与えられているという恵まれた環境です。
将来、その中から日本代表の監督やコーチになるべく人材が育つことを願っていますし、理想的には、その人材が必ずしも日本代表経験者でなくてもいいように思います。
私が経験した20年前のNZでは、有名な選手であろうと、オールブラックスの選手であろうと、ノースハーバー協会のクラブでコーチングをスタートし、経験と実績を積み、州代表のアシスタント、ヘッドを経てスーパーへ、という素晴らしいパスウェイがあり、それぞれが独創的で個性のあるコーチングをしていたことを覚えています。
また、各クラブにはトップチームの他に、日本でいう2本目、3本目、U19、U15、U85kg(体重別)などの多くのカテゴリーが存在し、エリートからソーシャル目的の選手まで毎週それぞれのカテゴリーでリーグ戦の試合があり、試合が終わればカテゴリーに関係なくみんなビールを楽しむというのがラグビー文化として根付いていました。その各カテゴリーのそれぞれのチームにコーチがいて、若いコーチもアウトプットの場が与えられていました。
ところが、そのNZでも有名な選手が引退後にすぐコーチになっていることが非常に多くみられるようになってきました。
コーチと選手は違う職業なはずですが、これが普通になっていることに疑問を感じながら、受け入れるしかないのが現状です。
長々と書きましたが、日本の問題は、それ以外の環境にいるコーチ、コーチを目指している学生などの人材が経験をつめる場が少なく、その環境の中で頑張っている人をサポートする環境が非常に限られていることだと思います。
ラグビーをエリートだけのスポーツにするのか、子供から大人まで生涯スポーツとするのか、選手だけでなくコーチの環境も今非常に大切な岐路にいるような気がします。
微力ですが、その一助となれるように、普及育成に対して貢献していければと思います。
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