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執筆者の写真濵村裕之

「ラグビー、22m内の攻防が試合を決める?」

昨年のワールドカップ以来、久々に国際試合の時期が始まりました。日本をはじめ多くの国代表では新しいコーチ陣や選手が加わり、次のワールドカップに向けた準備が始まり、楽しみが増えてきました。


国際試合では、戦力が拮抗しているため、試合の中でうまれた数少ないチャンスをものにできるかが重要になります。


特に、マオリオールブラックス第1戦後の日本代表ヘッドコーチのコメントでも言及されていましたが、敵陣22mでのチャンスをいかせるかどうかは試合結果に大きな影響を与えることになります。


そこで、今回は「22mへの侵入とその影響」について見ていきたいと思います。

度々、このブログにある「濵村式勝利の分岐点」の22m効率として触れていますので、興味のある方は、参照にしてみてください。


 

今回は、日本代表の4試合とティア1国の試合を対象として、直近の合計10試合のデータを整理してみました。


結論から言うと、やはり22m効率の高いチームが試合に勝利していること、そして、敵陣22mに入る要因としてレフリングが大きく影響することがわかります。

(データ数が少ないため、あくまで対象試合をみると)


ここでいう、敵陣22mへの侵入とは、次のような定義となります。

①敵陣22m内でのスクラムやラインアウト

②アタックを継続した結果、敵陣22m内へ侵入しタックルによりラックが成立した場合

③敵陣22mの外のエリアで発生したラインブレイクでそのままトライになった場合は含まない

④敵チームのタッチキックで結果的に敵陣22m内でラインアウトを得た場合

④敵チームの22m内でのターンオーバーの結果として、敵陣22m内でアタックが始まった場合。


 
  1. 敵陣22mにおけるトライの影響


テストマッチ
直近10試合のテストマッチにおける得点とトライ数の関係(勝利チームは色付き)

この10試合での総トライ数は55トライあり、その69%にあたる38トライが敵陣22m内へ侵入した後にうまれたことからも、このエリアでの攻防が試合に大きな影響を与えていることがわかります。


言い換えると、このエリアに入らせないようにすることが重要であり、それを可能にするためには、「正しいエリア」で常にプレーをすることが求められると言えます。もちろん、どのチームにもプレーモデルやスタイルがあり、「こだわり」をもちながら練習をし、その「こだわり」によって試合を優位にすすめようと考えていると思います。


一方で、試合当日の天候や風の強さ、レフリングなどの「自分たちが変えられない要因」に対して、練習をしてきた優位性を試合で発揮できていない状況にあるのであれば、「自分たちが変えられること」によってその状況に適応していくことが求めらます。


少し話は逸れますが、リーグワンの試合でもよく見られるので、「正しいエリア」について触れたいと思います。


「正しいエリア」とは、チームによって考え方は異なるものだと考えています。例えば、あまりキックを使わずに自陣から攻めていくチームにとっては、「正しいエリア」は自陣の深いエリアも指すことになります。


その結果として、敵陣まで入りスコアし、試合にも勝利できているのであれば、それはそのチームの強みであり、「正しいエリア」になります。


しかしながら、よく散見されるのは、その結果としてボールを失い、多くの時間を自陣でのディフェンスに費やしたり、ペナルティーをとられて、相手チームに22m内へ侵入させる機会をあたえているよう場合、そのチームが「正しいエリア」でプレーできているのか疑問です。


私自身、相手チームを分析するときに、相手チームの特徴を理解する点からも、そのチームにとっての「正しいエリア」とはどのエリアになるのかを考えるようにしています。



 

2. 敵陣22mへの侵入について


次の表は対象となる試合で、各チームが敵陣22m内へ侵入した回数と、その要因についてみたものです。色がついているのは、試合に勝利したチームの数字です。



ラグビー敵陣22m
直近のテストマッチにおける、敵陣22mへの侵入回数とその要因

 項目定義説明

 ・DF Efforts :キックチェイスやDFのプレッシャーによって、結果的に22m内でのプレー機会を得た場合

 ・アタック継続:22m外のエリアで開始したアタックを継続することで、結果的に22m内へ侵入した場合

 ・キック戦術:50/22やキックを再獲得することで、結果的に22m内でのプレー機会を得た場合

 ・レフリー要因:22m内外での相手チームのペナルティーによって、結果的に22m内でのプレー機会を得た場合



この表からわかるように、全体としては50%がレフリー要因、つまりペナルティーによって敵陣22m内へ侵入していることから、やはり反則が試合に与えている影響が大きいことがわかります

2試合(日本vマオリ1戦目、NZvイングランド1戦目)のみレフリーの影響よりも自分たちのアタックで侵入した割合が多くなりました。


先述したようにレフリーの判断については、「自分たちで変えられるものではない」ので、試合中のレフリーの判断や傾向についてチームが適応していくしかありません。


ここでは、レフリー要因という定義を使いましたが、言い換えるとアタック側のチームが「正しいエリア」でアタックをすることで、適切なプレッシャーをかけ続け、その結果としてディフェンス側の反則を誘ったと言えます。反則のペナルティーによって敵陣22m内へ侵入、またはペナルティーゴールなどで確実に得点をとって帰ることが、僅差の試合での勝敗を決める大きな要素となります。


日本代表の場合、「超速ラグビー」というスローガンのもと、クイックタップが多用されています。もちろん、その結果として22m内へ侵入できていることもありますが、試合の流れによっては、別の選択肢で確実に22m内へ侵入することも必要です。要は、ここから試合を経験していく中で、今後最適なバランスがみつかればいいのかと感じています。


 

3. 敵陣22m内でのプレー精度


次の表は対象となる試合で、各チームの敵陣22m内でのアタック精度についてみたものです。色がついているのは、試合に勝利したチームの数字です。


アタック効率
直近10試合のテストマッチにおける22m内でのアタック効率

 項目定義:ポジティブな結果とは、次の内容を指します

 ・トライ:結果としてトライを獲得

 ・ペナルティーゴール:22m内でのアタックの結果、反則をえてペナルティーゴールを成功

 ・DFペナルティー:敵チームの反則により、新たなチャンスを得た場合

 ・ボール維持:相手のノッコンなどの結果で、再度22m内で新たなチャンスを得た場合


僅差の2試合(日本vジョージア、NZvイングランド1戦目)を除いては、勝利したチームの数字が上回っており、勝利したチームのアタックポジティブ率は61%となっています。 


一方で、南アフリカvアイルランドのように、このレベルになると22mに入ることよりも得点機にしっかり得点することの方が優先されるのかもしれません。


日本対ジョージアも、このエリアでのジョージアのトライが1つだけ日本を上回ったことが最終的な試合結果につながることとなりました。


ジョージアの22mへの侵入要因としては、73%が日本代表の反則によるものなので、今週末のイタリア戦では、セットプレーなどの反則をどれだけ減らすことができるのかを興味深くみていきたいと思います。


 

みなさんも、今週末のテストマッチを見たり、ご自身のチームの春シーズンをふりかえる際に、一度このような視点で試合をみてみてはどうでしょうか?


そのチームの22mへの入り方の特徴や、そのチームにとっての「正しいエリア」とはどうなのか、その日の天候なども考慮してみてみると、新たな発見があるかもしれませんね。


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