#2 ラグビー分析
前回のブログの最後に、「自分のチームと上位チームのターンオーバー率の差をみて、自分たちの分岐点を探してみるのもいいかもしれませんね」という部分をもう少し深掘りしたいと思います。
ターンオーバー率とは、攻撃回数に対するターンオーバー回数の割合です。
詳細の定義まで説明すると超長文になるので、ここでは攻撃開始と終了時のターンオーバーの定義を決めてもらえればいいかと思います。比較する試合が同じ定義で評価されていれば大丈夫です。
ターンオーバー率
W杯決勝戦勝者 25.4%
W杯ベスト8 26.6%
日本代表23年 32.4%
日本代表19年 37.2%
仮説としては、ベスト8で勝つためには約30%を超えてしまうと試合に勝つ確率が低くなるということが言えると思います。言い換えると、勝つために約50回のアタックでどのチームも15回まではエラーできるということです。
実際のリーグワンでは、40%が勝者と敗者の分岐点だったので、これを1つの指標として試合中も常にチェックしていました。
試合中、特にハーフタイムでどのようなメッセージを選手に伝えるのか、コーチとしては非常にセンスが問われる場面です。コーチの頭にはどうしてもボールを失った場面が残り、修正ポイントとしては気になることは確かです。一方、後半に向けてポジティブなメッセージにしたいということも理解できます。
私自身は、この数字のレベルを常に意識していたので、試合中のコーチボックスから移動するヘッドコーチには、冷静に状況を理解してもらうような伝え方を心がけていました。
メッセージを伝えるべきコーチが、チームの状況を冷静に判断できる1つの指標として使ってみてはいかがでしょうか?この数字が危険域に入れば、どうぞ思い切りカミナリを落としてあげてください!!
決勝で敗れたニュージーランドの試合後のターンオーバーの詳細をみてみると、
ブレイクダウン 23.8%
コンタクト状況 9.5%
ハンドリング 28.6%
ハイボール 19.0%
という感じで、奇しくもターンオーバー全体の81%がコアスキルと呼ばれるもので、ニュージーランドが一番力を入れていたエリアで起こったことは非常に興味深いことです。
では、ニュージーランドの選手にスキルがなかったということでしょうか?
アイルランド戦では完璧だった選手に何がおこったのでしょうか?
その要因として考えられるのが、想定を超える南アフリカのDFだったと考えます。予期できないレベルのプレッシャーによってニュージーランドの選手が普段では考えられないようなエラーを起こしたのです。
ラグビーはエラーのスポーツです。
プレッシャーの中でスキルを実践することが求められる試合で、エラーが起きてしまうスポーツなんです。
決勝のニュージーランドは、そのプレッシャーを想定した練習をどこまで準備していたのか、ということが言えます。この準備とは、短期的なものだけでなく、それまでの4年間という長期的な視点でも考えておく必要があります。なぜなら、選手がそのプレッシャーに慣れるには時間を要するからです。
指導者の皆さん、ミスのない見た目完璧な練習で満足していませんか?
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