#4 ラグビーワールドカップフランス大会
現代ラグビーにおけるキックの重要性は高まるばかりです。特にテストマッチのようなレベルでは両チームのDF力が高いため、キックを用いた戦術は非常に重要です。
ラグビーでアタック側がDFに対してプレッシャーを掛ける方法?
・早いテンポで攻撃を継続することでボール支配率を高める方法
・キックを活用して地域的な支配率を高める方法
19年日本大会では、この2つをバランスよく使いながら戦っていましたが、今大会では後者の方に比重が高かったかなぁっていうのが個人的主観。
準々決勝のニュージーランドvアイルランドの試合での30フェーズを超える素晴らしい攻防は、典型的な前者のものでした。
今回のブログでは、キックの検証を「超我流」の自由視点でみなさんにお届けできればと思っています。
W杯2大会の日本代表プールゲーム4試合について、独自データに基づいた検証をしながら、以下の内容を考察していきます。
だから言うたやん?!
実は筆者は今大会期間中にもキックの有効性について呟いていました。。。
有効なキックの定義については、また別の機会に皆さんにご紹介できればと思いますが、筆者の20年のアナリストとしての経験から実際にリーグワンでも使用していた基準で算出した結果、①国際レベルの試合でのキック精度はどの国も非常に高いレベル ②日本代表のキックの精度が不安定 ③フランス大会のサモア戦を除いてキックの精度が低い試合は負けている、と3つのことが上の表から言えると思います。
では、19年大会と比較してみると。。。
この表からも、19年大会の日本代表のキックが非常に効果的であったことが見えます。
キック数がどうであれ、試合の中でそれぞれのキックの目的が達成されていることが重要です。19年大会では、地域的なプレッシャーだけでなく、DFのウイングやフルバックのポジションにキックなのかランなのかを考えさせることにより、キックがアタック自体に厚みをもたせる武器となっていたのではないでしょうか?
裏側の事実
今大会、日本代表のアタック効率は前回大会より後退しており、その主要因がキックの精度によるものでした。その裏で、実は今大会では日本大会に比べて日本代表のターンオーバー数は減少しています。
今大会前には、多くのエラーがみられ不安要素となっていたと思いますが、2大会を比較すると攻撃機会が増えているにも関わらず、ターンオーバー数は4試合合計で71個→66個と減少していました。66個のうち、10個がラインアウト絡みのものです。
攻撃機会総数に対するターンオーバー数の割合も、37.2%→32.4%と減少しています。
ただし、2大会を比較するとゲーム自体のアタック構成が大きく変化しています。
・日本大会に比べて攻撃機会は増えているが、総攻撃時間は4試合で約30分減っている
・日本大会の1回当たりの平均攻撃時間25秒に対して、フランス大会は14秒。
この2点を考慮すると、攻撃時間が減った中でスキル発揮機会が減ったことによるエラーの減少なのか、スキル自体が確実にレベルアップしているのか、別途検証が必要です。
プール戦4試合平均で32.4%という結果は非常に驚異的な数字で、リーグワンの経験では、私自身の勝敗分岐点を40%以下としていました。ターンオーバー数が40%を超えると、その試合に勝つ確率は非常に少ないと考えていたことからすると、32.4%でも負けるって????? テストマッチだと35%が勝敗ラインになるかも。。
リーグワンのレベルもあげなあかんということかもしれません!!
どちらにしても、あの大会前のレベルから本大会にここまでアタックの精度をあげたこと、その結果としてもう少しのところまでベスト8の夢をみさせてもらえたことは驚異的なことだと思っています。
今後の課題
もちろん、キック自体の精度をあげることは重要ですが、今大会からの学びは3つ。
・ハイボールのボールキャッチスキルをあげること
・カウンターアタックの精度をあげること
・カウンターアタックからのキックチェイス精度をあげること
この表では、日本代表の敵キックからのカウンターアタックについて、有効なキックを中心にみましたが、単純にキックの精度が前回大会より低かったことは明確です。その上で、特筆すべきは、ハイボール確保の重要性が高まっていることです。準決勝のイングランドv南アフリカなどは天候の影響もありましたが、典型的な例だと思います。
カウンターをするためには、まず相手のキックを確保することが重要です。今大会でも日本代表は、ハイボールのコンテストだけで約10回のアタックチャンスを失っています。
カウンター自体の精度を上げる手段として、キックでもランでもどちらでも戦術として考えていけばいいと思います。今大会での日本代表の合計トライ数12個のうち、8個(66.7%)がラインアウトとスクラムからの攻撃になります。特にスクラムから6個というのは、スクラム自体の成長だけでなく、そこからの攻撃の精度が高かったことが言えます。
一方、セットプレー以外のいわゆるアンストラクチャーからの攻撃、特にキックが増えている現代ラグビーの中でカウンターからの攻撃精度をあげることは今後必要になってくるのかもしれません。
最後に、キックを蹴ったあとのキックチェイスといわれるDFです。アルゼンチン戦でもあったように、日本代表のキックからカウンターをされて、今大会では9回ラインブレイクされてしまっています。
キックを多く使い、アタック時間を相手に与える以上、そのDFについても精度をあげること、そしてその状況で各選手が判断して自分で走り出せることが今後さらに求められるのではないでしょうか?
今大会の結果に関わらず、キックは非常に重要な戦術の1つです。
今大会での学びが次のオーストラリア大会で活かされれば、次はベスト8もある!!
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