#1 ラグビーW杯フランス大会
日本大会でのラグビー日本代表の躍進、そこへの期待感も大きかっただけに非常に残念な結果となりました。しかし、同時に4年後のオーストラリア大会への準備がスタートしたということです。
このブログでは、そんな準備に向けた検証を「超我流」の自由視点でみなさんにお届けできればと思っています。
初回は、現在世界ランク1位のアイルランドの躍進の裏側を検証しながら、次の4年間の準備に対して、以下の内容を考察していきます。
ベテラン選手の引退に伴う選手発掘と継続した選手強化
19年日本大会の中心メンバーであったキャプテンのRory Best、No.8のCJ Stander、FBのRob Kearney選手の引退に伴い、アイルランド代表にとって、これらの選手の後継者を探すことが急務でしたが、その穴を埋めるべく若手を抜擢し、この4年間でそれらの選手が約30試合のテストマッチを経験した上で今回のW杯へ出場しています。
上表は、両チームの大会登録時点での平均年齢や総キャップ数、平均キャップ数を表しています。アイルランドの総キャップ数はこの4年間で約200キャップ増え、33人の登録選手のうち日本大会を経験した選手が15人で、その選手たちがこの4年間で平均30キャップを経験した上でこのフランス大会へ望んでいることになります。例えば、Josh van der Flier選手は前回大会26歳で18キャップでしたが、この4年間で2022年のワールドラグビー年間最優秀選手にまで成長し、フランス大会には30歳で52キャップで参加しています。
また、国内で選手層の薄いポジションには、James LoweやMack Hansenのような選手を使ってチーム力を底上げしていることも興味深いです。
特に、フランス大会までの期間で試合経験を増やすための工夫を感じられたのが、アイルランド代表の2022年NZツアーでした。このツアーでは約40人の選手を引き連れて、3回のテストマッチの間にマオリオールブラックスとの試合を若手選手で行ったことです。火曜日にマオリオールブラックスと試合をして、土曜日にテストマッチと週に2回試合をするという非常にタフなスケジュールの中で試合数を確保しにいきました。
一方の日本代表は、33人の登録選手のうち20人が初選出、13人が日本大会を経験した選手です。この13人のこの4年間の平均キャップ取得数は約13とアイルランドの半分にも満たない状況でした。今回の大会までの準備では、コロナなど多くの問題がありましたが、次の4年間で日本代表が学ぶべきことは多いのかもしれません。
若手選手の育成システムへの投資
アイルランド代表のアナリストと育成システムについて話す機会があり、彼らのシステムについて大変興味深い内容の話を聞いたことがあります。アイルランドのプロチーム傘下のアカデミーチームのアナリストはアイルランド協会が直接契約をして雇い、そのアナリストは協会独自の定義にしたがって選手のデータを協会とチームへ提供し、国全体で選手育成につとめているという内容でした。アナリストだけでなく、S&Cコーチも同様に協会が直接資源投資をして若手選手の育成に取り組んでいるということに、正直頭を殴られたような思いでした。
では、日本の場合、たとえば若手世代の育成=大学チームのアナリストを日本協会が直接雇うような視点はあるのでしょうか?
アイルランドが選手育成のためにお金だけでなく人材なども含めた多くの資源を投資したのが、U20とセブンズの強化です。長期的な若手選手育成への資源投資により、U20代表は6カ国対抗戦でも2019年からの4大会(2020年大会はコロナのため中止)で3回もチャンピオンになり、今年のU20世界大会でも準優勝の成績を収めています。そのプログラムを経た選手が、このフランス大会でも活躍をしています。また、U20と代表の間の世代強化を継続するために、昨年の秋には若い選手で編成したチームで南アへ遠征し、その世代の強化も継続しながら、次のオーストラリア大会に向けた投資もすでに進めている状況です。
セブンズの強化もその1つです。フルバックのHugo Keenan選手はセブンスのワールドシリーズでの活躍が認められ15人制に招集されました。アイルランドでは、もともと7人制を強化していませんでしたが、7年前に強化を始め、今では来年のオリンピックに出場するまでに強化をしてきており、7人制も重要な15人制の強化の一環と捉えられています。
日本でも多くの選手がU20や7人制を経験してきておりますが、今後の日本代表との強化連携については期待したいところです。
スタッフの継続性
19年日本大会のアイルランド監督のJoe Schmidt氏は、大会前に監督辞任を発表していました。現監督のAndy Farrell氏は当時のDFコーチになります。日本大会後、アイルランド協会は現監督を指名しますが、数名の新しいコーチの追加以外、多くのバックルームスタッフは継続されることになりました。特に昨今重要視されているハイパフォーマンス的な立場であるメディカル関係やS&C関係、アナリスト関係のスタッフはすべて留任した形で、日本大会の経験をもってフランス大会に参加しています。
選手同様、日本代表スタッフも前回大会を経験していること、そしてこの4年間で多くの経験をもってフランス大会に参加しており、スタッフのキャップ数も当然増えています。すべての関係者が、このフランス大会でも多くの犠牲のなかで戦ったこととおもいます。その尋常ではない努力には感謝しかないです。
次の4年間の準備が始まった今、新生日本代表が、この継続性を重視するのか、全く新しいスタッフでスタートするのか、その動向に注目したいと思います。
このように、次のオーストラリア大会までの4年間、日本代表がどのような準備をして世界の8強に挑むのか、他国の強化から学ぶべきことも多いように思います。
次の4年間、オーストラリア大会までの準備期間はどの国にも平等です。
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